年収が上がるごとに、「やりたいこと」のできる数が増えていく。でも年収がいくらなら今この日本で不安なく子育てしながら生きることができるのだろうか?
「年収を上げて、不安の無い人生を送りたい。」誰しもが思うことですが、実際、年収がどれくらいあれば、普通のくらしができるのか知りたくてこの記事を書いています。
昔、理髪店で順番を待っているときに雑誌で見た強烈に印象に残っているアンケート結果があります。それは、定年を迎えたサラリーマンへのアンケート調査した結果だったのですが、
「サラリーマンをしていて一番後悔していることは何ですか?」というものです。一番多かった回答が、
「チャレンジをしなかったこと。」
でした。
これまでの考えたが変わるきっかけをもらった瞬間でした。当時、私は、仕事にも慣れ、毎日のルーティンワークを続けていれば、毎月一定の給料がもらえる状態でした。
そのときの年収は、400万円です。独身ということもあり、毎日の生活は余裕でしたが、代り映えのしない毎日に何か物足りなさを感じていたのです。
このままいけば、自分も定年したときに「チャレンジしなかった。」と言うのではいか、「40年も働いてそんなことは絶対に言いたくない」と思い、これまでの働き方を改め、「お金」に対するマインドセット(考え方)を大きく変えていくことになりました。
「自分が人生でやりたいことに必要なお金」= 目標年収
とすることに決め、給料で貰えるお金が400万円だから、その範囲内で人生を送る。ということはやめて、
「自分の人生でやりたいことに必要な金額のお金を稼ぐ」という考え方に変えたのです。
当時、私は、結婚する直前だったので、家庭を持つ責任がありました。「家庭を運営していきながら、自分のやりたいことをするためには、いくら稼がなければいけないのか?」と考え、
このとき自分がやった
「目標年収の決め方」を、将来サラリーマンになる息子に教えたくて今この記事を書いています。
この時、検討条件としては、
40歳で住宅ローン3,000万円を借入、40歳の時に生まれた子供1人を国立大学で一人暮しさせ、65歳で退職して、100歳まで生きるためには、どのくらいな年収が必用かを検討しました。
家族の生活費以上を稼げば、残りは、自分自身、私の場合は、「サラリーマンを続けながら、もう一つ別な収入元を作る」ことに使用できます。
年収400、600、800、1,000万円のサラリーマン手取年収
ここでは、年収400万円、600万円、800万円、1,000万円の手取り年収を示します。
3人家族、夫、妻、子供(16歳以下)のときの手取り収入になります。
天引前年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 | 手取年収 |
---|---|---|---|---|
400万 |
8.6万
|
5.5万
|
59.2万
|
314.6万
|
600万 |
20.8万
|
30.8万
|
87万
|
461.4万
|
800万 |
48.3万
|
45.8万
|
112万
|
594.2万
|
1,000万 |
83万
|
62.8万
|
122万
|
732.6万
|
表は、妻は専業主婦として、扶養控除額38万円として計算したそれぞれの年収の手取額を示します。
当時、私は30歳前半でしたが、「40歳までにその年収になっていれば、その後、家庭を安全運営していける年収はいくらか?」「家庭運営資金をはっきりさせれば、残る収入は金持ちになるための副業に使う」という観点で、家庭運営に必要な年収を割り出すことにしました。
当時の年収は、400万円、手取り年収は314.6万円です。
表のように年収が上がっていくごとに手取り年収が増えていきます。
このとき、金持ちの印象しかなかった、年収1,000万円が、税金や社会保険料が竹さん天引きされるので、手取り額が732.6万円と意外と少ないことに気が付きました。
児童手当
児童手当は、0歳~中学生(15歳の3月まで)の子供がいる家庭がもらえる制度です。当時、まだ子供がいませんでしたが、子供が1人の場合、児童手当がいくらもらえるかを調べることにしました。
次にそれぞれの年収で児童手当を満額もらった場合の総額を示します。
天引前年収 |
児童手当総額 |
---|---|
400万 |
198万
|
600万 |
198万
|
800万 |
198万
|
1,000万 |
90万
|
「満額もらった場合」と書きましたが、児童手当は、もらえる期間がくせ者で、もらえる最終年齢が「中学生(15歳の3月まで)」なので子供が2月とか3月の早生まれだと、ほぼ丸一年分の18万円程度を捨てることになります。
児童手当だけを考えると子供は、「4月生まれ」が一番得をするということになります。
所得制限にかからない、年収800万円以下の場合、子供の年齢が0歳~3歳までは、1万5,000円、3歳から15歳の3月(中学生まで)は、月々1万円もらえます。
所得制限にかかる場合は月額5000円となってしまいます。所得制限無しの場合と比較して108万円の差になることがわかりました。
子供一人の場合、年収800万年以下がもらえる児童手当は、総額198万円で、年収1,000万円になると総額90万円に減額されることを知りました。
退職金はいくら
60歳の定年退職時、退職金をいくらもらえるかで、自分で準備する老後費用額が大きく変わってきます。
厚生労働省が発表している平成25年『就労条件総合調査結果の概要』によると、
退職給付制度の有無に関して、従業員数1,000人以上のいわゆる大企業が93.6%の割合で制度を導入しているのに対し、
30人から99人の中小企業は72.0%と退職金制度を取り入れている企業が21.6%少ないという結果が出ています。退職金が出ない会社がある事実を知りました。
勤続年数 |
高校卒 (現業職) |
高校卒 |
大学卒 |
|
---|---|---|---|---|
定年退職金 |
1,128万
|
1,673万
|
1,941万
|
|
手取退職金 |
42年
|
1,128万
|
1,673万
|
1,941万
|
38年
|
1,128万
|
1,673万
|
1,941万
|
|
30年
|
1,128万
|
1,664.4万
|
1,919.0万
|
|
20年
|
1,111.6万
|
1,591.8万
|
1,814.9万
|
平成25年に厚労省から発表された『就労条件総合調査結果の概要』によると、20年以上勤めた45歳以上の退職者で、
定年を迎えた人がもらった退職金(一時金・年金)の平均は、「高校卒(現業職)」1,128万円、「高校卒(管理・事務・技術職)」1,673万円、「大学卒(管理・事務・技術職)」1,941万円でした。
退職金の手取り金額は、勤続年数により所得控除額が変わります。表には勤続年数42年、38年、30年、20年の場合の退職金の手取り金額を示しています。
勤続年数と定年退職金額によっては、退職金は無税になります。
退職金は、会社の制度なので、どの企業に勤めているか、高卒か、大卒か、何年務めるかで大きくかわります。私の場合、定年を迎えた大先輩に直接聞くという、やりずらいことをして、
定年退職金が2,000万円程度出ることがわかったので、上表の中から退職金額を選び
退職金は1,941万円と仮定しました。
ちなみに退職金額3,000万円ですと、手取額は「勤続42年」2,954.4万円、「38年」2,907.6万円、「30年」2,813.8万円、「20年」2,696.6万円になります。
子供1人の大学卒業までの教育費総額
子供1人を幼稚園から高等学校まで公立学校に進学させ、大学は国立大学で一人暮しで卒業させる場合の幼稚園から大学までの教育費は下表のようになります。
※高等学校までの教育費は「平成28年子供の学習費調査」(文部科学省 )より
※大学費用の教育費は「平成28年度学生納付金調査」(文部科学省)より
※大学受験費用、一人暮し準備費は、実際額を想定した仮定です
※大学の一人暮らし費用は「第52回学生生活実態調査の概要報告」(全国学生生活共同組合連合会)より
子供が18歳になる高校卒業までに541万円使用し、大学は受験費用、一人暮らしの準備費用、一人暮し生活費、大学入学金、授業料で4年で887万円を使いきってしまいます。ため息しかでません…
以上のように
子供1人にかかる大学卒業までの教育費は、1,428万円
住宅ローン3,000万円を借りたときの返済額
住宅ローンを3,000万円借りると、総返済額がいくらになるか検討します。
【住宅ローン借入条件】
借入時年齢:40歳
借入金 :3,000万円
ローン利率:1.12%固定金利(フラット35固定金利)
返済期間:35年
以上の借入条件で3,000万円借りると
月々のローン返済額は8万6,374円(年間103万6,488円)となり、
35年でローン総額3,628万円返済することになります。
628万円が利子分となり、低金利時代とは言われていますが、利子は高額になることが実感できます。
家を買うにはしょうがないと考えるのか、もったいないから家はやめておこうと考えるのは人それぞれですが、お金持ちで3,000万円キャッシュで払えれば、628万円安くなるとと考えると、ローン自体は本当に損だと言わざるおえません。
3,000万円借入時の10年間の住宅ローン減税額
住宅をローンで買うと、10年間は住宅ローン減税の恩寵を受けられます。
10年間の住宅ローン減税額を下記サイトで計算しました。
まずはデータの入力です。「年収400、600、800万円、1,000万円の場合で 配偶者あり 配偶者を除く扶養家族16歳以上は0人。借入金額3,000万円、金利1.12%を」を入力しました(下の入力画面は年収800万円の例です。)。
計算結果
簡単な入力で、
それぞれの年収の住宅ローン減税と住まい給付金額が下表のようになることがわかりました。
天引前年収 |
住宅ローン控除 |
すまい給付金 |
---|---|---|
400万 |
169.0万円
|
30万円
|
600万 |
259.3万円
|
0円
|
800万 |
259.3万円
|
0円
|
1,000万 |
259.3万円
|
0円
|
月々の生活費
月々の生活費は、贅沢をしないが、無理もしていない生活費を設定。リアルな我が家の支出額も入れつつ以下のように設定しました。
月々の生活費支出は26万9,955円と仮定しました。
年間で、住宅ローン込みの生活費が、323万9,460円になります。ここですでに、年収400万円、手取額314.6万円では、家族運営できないことを知って、驚きました。家を買うと破産かなと
一時的な支出
毎月の生活費以外にも、臨時で支払う支出があります。普段はボーナスで賄うことにしているものです。
車購入費:
・諸費用込みで240万円程度のファミリーカーを10年ごとに買い換える。
家族旅行費:
・年間10万円
住宅維持費、住宅保険:
・修繕積立金年額12万円
・地震保険は年額2万200円
・家具、家電買い替え費用 年額8万円程度
自動車税・車検費:
・自動車税は年間3万4,500円
・車検は2年ごとに10万円
・エンジンオイル、タイヤなどの交換費用は年間3万円
一時的な支出は以上の4項目としました。 普段は年2回のボーナスから払う支出です。
一時的な支出の年平均額は、67万4,700円となります。
一時的な支出をいれると、年収600万円でも危なくなってきました。
年金額
日本年金機構によると、モデル世帯(後述)の年金月額は約22万1,000円(平成29年4月現在)とのこと。
ちなみにモデル世帯とは、夫の平均的収入(賞与を含む月額換算)が42.8万円(年収513.6万円)で40年間厚生年金に加入し、妻が専業主婦、妻が第3号被保険者を含め、国民年金を40年納めた場合です。
40年の長期で、しかも生涯の平均年収が513.6万円で、やっともらえる年金月額が22万10,00円なのです。しかも将来は減額が濃厚です。「そもそも、厚労省のモデルケース自体に無理がある」との意見があるのも頷けます。
実際にもらっている年金額はモデル世帯より少ないというデータがあります。実際の年金額の平均は、日本年金機構の統計によると次の表のとおりです。
2015年の値を見ると
・厚生年金 月額14万5305円(20年以上加入の場合、基礎年金含む)
・国民年金 月額5万5157円
となります。
夫が会社員、妻が専業主婦というモデルに合わせた場合、平均の年金額は20万462円になり、モデル世帯の年金額より2万500円ほど少なくなります。
以上の年金情報より、今回の検討では、
年金額は月額20万,462円と仮定しました。
年収800万円の暮らしの検討
ここまで、長々と、検討に付き合って頂いて有難うございました。
以上の検討により得た情報を整理して年収400、600、800、1,000万円、40歳で住宅ローン3,000万円を借入、40歳の時に生まれた子供1人を国立大学で一人暮しさせ、65歳で退職して、100歳まで生きるには年収いくら必要か検討していきます。
ある意味、日本人が想像する普通のくらしは、年収いくらからできるのか?のような検討になってきましたが続けます
まずはこれまでの検討結果を整理します。
【収入】
・手取り年収
天引前年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 | 手取年収 |
---|---|---|---|---|
400万 |
8.6万
|
5.5万
|
59.2万
|
314.6万
|
600万 |
20.8万
|
30.8万
|
87万
|
461.4万
|
800万 |
48.3万
|
45.8万
|
112万
|
594.2万
|
1,000万 |
83万
|
62.8万
|
122万
|
732.6万
|
・児童手当
天引前年収 |
児童手当総額 |
---|---|
400万 |
198万
|
600万 |
198万
|
800万 |
198万
|
1,000万 |
90万
|
・住宅ローン減税、住まい給付金総額
天引前年収 |
住宅ローン控除 |
すまい給付金 |
---|---|---|
400万 |
169.0万円
|
30万円
|
600万 |
259.3万円
|
0円
|
800万 |
259.3万円
|
0円
|
1,000万 |
259.3万円
|
0円
|
・60歳~65歳の収入:再雇用で現役の4割の手取りと仮定します。
天引前年収 |
児童手当総額 |
---|---|
400万 |
125.8万
|
600万 |
184.6万
|
800万 |
237.7万
|
1,000万 |
293.0万
|
・年金:240万5,544円/年(20万462円/月)
・退職金:1,941万円
【支出】
・生活費(住居費込み):323万9,460円(26万6,165円/月)
・一時的な支出:67万4,700円/年(5万6,225円/月)
・教育費:総額1,428万円(学年ごとの費用は前述のとおり)
【検討条件詳細説明】
1. 妻は専業主婦、子供1人の3人家族
2. 40歳で年収400、600、800、1,000万円になり、それが60歳まで続く
9. 60歳で定年その後再雇用で65歳まで働く。手取り給料は現役の4割と仮定
3. 子供は1人で幼稚園から高等学校まで公立学校、国立大学一人暮らしで進学
5. 40歳で3,000万円の住宅ローンを金利1.12%で35年ローンを組む
6. 住宅ローン完済時の年齢は75歳
7. 車は50歳、60歳、70歳の時に240万円のファミリーカーを買い替え
8.車は80歳で手放す。ここから車費用は無し
10.老後(65歳以降)の生活費は月々25万円(毎月生活費だけで約5万円の赤字)
11. 40歳時の貯金は0円と仮定
として40歳から100歳までの年収400、600、800、1,000万円の貯蓄残高の推移グラフを書くと下のようになります。
年収400万円
年収600万円
年収800万円
年収1,000万円
【グラフ解説】
グラフの横軸は40歳~100歳までの年齢、縦軸は貯蓄残高を示します。棒グラフは退職金1941万円を60歳の時もらった場合、折れ線グラフは退職金0円の場合の貯蓄残高推移を表します。
今回の検討では、年間支出が、「生活費323万9,460円+一時的支出67万4,700円=391万4,160円」、「子供1人の年間の教育費は、各学年で21万~223万円で、大学卒業までに1,428万円」と設定しています。この支出の時に、年収が400、600、800、1,000万円の場合どのような貯蓄推移になるかが比較どきます。つまり、
上の4つのグラフは、
同じ支出額で、自分の年収が400、600、800、1,000万円に40歳の時になった、その後の貯蓄額推移を示しています。
検討した当時、私の年収は400万円でしたが、まず年収400万円ですと、全期間赤字になりました。実際は、生活を切り詰めて収支をあわせて生きるのでしょうが、グラフを見ると、厳しい生活をおくりそうでした。
独身時代、年収400万円あれば、余裕で生活ができたのですが、家庭を持つと生活が本当にきつくなる!とこの時に気がつき、働き方と年収について深く考えるようになりました。
このとき、今の年収では、自分のやりたいことをやるなんて無理、「家や、子供の大学」さえもあきらめないといけないのか?と気づかされたことが、サラリーマンの私が年収次第で自分がやれることが決まる!と気が付いたきっかけでもあります。
よくか
Ans
普通の支出でも、家族持ちであると、年収400万円では、家族運営は厳しい方向になることがわかりました、また、年収600万円としても、老後の資金準備は厳しい、年収800万円からは、余裕がでてきて、年収1,000万円では、家族運営も問題なくでき、自分のやりたいことができる年収であることが、わかりました。
参考にした資料と補足説明
教育費については、幼稚園から高校までの教育費は、「平成28年子供の学習調査」(文部科学省)の資料を使用しました。
文部科学省が調査した各学年での教育費の額は下記のようになり、今回の検討では、この記載額を教育費として使用したとして検討しています。
一度、今回の検討の「教育費」の費目にはどんなものが含まれているのかを下表の左端の項目をみて確認しておくと、今回検討の教育費がどこまで網羅しているのかがわかります。
給食費やPTA会費、えんぴつ、ノート、消しゴム、ピアノなどの習い事費用、その他を含んだ統計データとなっているので、学校外の費用を含め、日本人が使用する教育費の平均と扱っても差し支えないデータです。
すべて公立学校に進学した場合の幼稚園から高校までの教育費
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm
大学費用の教育費は「平成28年度学生納付金調査」(文部科学省)のデータを使用しました。
大学の一人暮らし費用は「第52回学生生活実態調査の概要報告」(全国学生生活共同組合連合会)のデータを使用しました。
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
免責事項
当社は、当サイトにコンテンツを掲載するにあたって、その内容、機能等について細心の注意を払っておりますが、コンテンツの内容が正確であるかどうか、最新のものであるかどうか、安全なものであるか等について保証をするものではなく、何らの責任を負うものではありません。また、当社は通知することなく当サイトに掲載した情報の訂正、修正、追加、中断、削除等をいつでも行うことができるものとします。
また、当サイト、またはコンテンツのご利用により、万一、ご利用者様に何らかの不都合や損害が発生したとしても、当社は何らの責任を負うものではありません。