年収800万円のサラリーマンが40歳で住宅ローン3,000万円を借り、子供1人を国立大学一人暮しで進学させると、老後どのような暮らしになるのか
人生の3大支出は「住宅費」、「教育費」、「老後費」と言われていますが、この数千万円単位の支出を、最も幸せな収入額とも言われる年収800万円世帯が無事クリアして、幸せな老後を迎えることができるのか、どんな暮らしを送れるのかを知りたくて、今この記事を書いています。
年収800万円、40歳で住宅ローン3,000万円を借入、40歳の時に生まれた子供1人を国立大学で一人暮しさせ、65歳で退職して、100歳までどんな暮らしができるのかを一気通貫で検証していきます。
年収800万円サラリーマンの手取り収入
ここでは年収800万円の手取り年収を、年収400万円、600万円、1,000万円の手取り年収と比較しながら確認していきます。
天引前年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 | 手取年収 |
---|---|---|---|---|
400万 |
8.6万
|
5.5万
|
59.2万
|
314.6万
19.8万/月
|
600万 |
20.8万
|
30.8万
|
87万
|
461.4万
26.2万/月
|
800万 |
48.3万
|
45.8万
|
112万
|
594.2万
38.5万/月
|
1,000万 |
83万
|
62.8万
|
122万
|
732.6万
61.1万/月
|
妻は専業主婦なので扶養控除額38万円として計算したそれぞれの年収の手取額を示します。
日本は累進課税制なので、収入が増えると税と社会保険料が加速度的に増えてしまいます。年収800万円は、1,000万円と比べ、所得税が1割程低く、手取り収入も家族を支える収入としては十分と一般的には言われています。
年収800万円の手取り収入は594.2万円となります。
児童手当
児童手当は、0歳~中学生(15歳の3月まで)の子供がいる家庭がもらえる制度ですが、調べてみると、ご多分に漏れずに、高収入世帯はもらえる額が少なくなるルールがあることが分かりました。
国からお金が貰える制度は、高収入な人にとって必ずと言っていいほど、減額、無支給などの意地悪なルールがあるのです。
専業主婦世帯で児童が1人(=扶養親族等の数が2人)の場合、所得制限限度額は698万円(収入額だと917.8万円)となり、特例給付として児童1人につき月額5,000円となります。
年収800万円の手取り収入は594.2万円なので、所得制限には引っかかりません。
そして、もらえる期間がくせ者で、もらえる最終年齢が「中学生(15歳の3月まで)」なので子供が2月とか3月の早生まれだと、ほぼ丸一年分の18万円程度を捨てることになります。
児童手当だけを考えると子供は、「4月生まれ」が一番得をするということになります。
次にそれぞれの年収で児童手当を満額もらった場合の総額を示します。
天引前年収 | 児童手当総額 |
---|---|
400万 |
198万
|
600万 |
198万
|
800万 |
198万
|
1,000万 |
90万
|
所得制限にかかっていない年収800万円以下の場合、子供の年齢が0歳~3歳までは、1万5,000円、3歳から15歳の3月(中学生まで)は、月々1万円もらえます。その総額は198万円す。
年収800万円がもらえる児童手当は、総額198万円です。
年収800万円の退職金はいくら
60歳の定年退職時、退職金をいくらもらえるかで、自分で準備する老後費用額が大きく変わってきます。
厚生労働省が発表している平成25年『就労条件総合調査結果の概要』によると、退職給付制度の有無に関して、従業員数1,000人以上のいわゆる大企業が93.6%の割合で制度を導入しているのに対し、30人から99人の中小企業は72.0%と退職金制度を取り入れている企業が21.6%少ないという結果が出ています。
勤続年数 | 高校卒 (現業職) |
高校卒 (菅理・事務・技術職) |
大学卒 (管理・事務・技術職) |
|
---|---|---|---|---|
定年退職金 |
1,128万
|
1,673万
|
1,941万
|
|
手取退職金 |
42年
|
1,128万
|
1,673万
|
1,941万
|
38年
|
1,128万
|
1,673万
|
1,941万
|
|
30年
|
1,128万
|
1,664.4万
|
1,919.0万
|
|
20年
|
1,111.6万
|
1,591.8万
|
1,814.9万
|
平成25年に厚労省から発表された『就労条件総合調査結果の概要』によると、20年以上勤めた45歳以上の退職者で、
定年を迎えた人がもらった退職金(一時金・年金)の平均は、「高校卒(現業職)」1,128万円、「高校卒(管理・事務・技術職)」1,673万円、「大学卒(管理・事務・技術職)」1,941万円でした。
退職金の手取り金額は、勤続年数により所得控除額が変わります。表には勤続年数42年、38年、30年、20年の場合の退職金の手取り金額を示しています。
勤続年数と定年退職金額によっては、退職金は無税になります。
年収800万円の退職金は1,941万円と仮定します
ちなみに退職金額3,000万円ですと、手取額は「勤続42年」2,954.4万円、「38年」2,907.6万円、「30年」2,813.8万円、「20年」2,696.6万円になります。
実際、退職金は企業によって大きく異なってきますので、働いている間に情報を上手く入手して自分のライフプランに活用することをお勧めします。
大学卒業までの教育費総額
子供1人を幼稚園から高等学校まで公立学校に進学させ、大学は国立大学で一人暮しで卒業させる場合の幼稚園から大学までの教育費は下表のようになります。
※高等学校までの教育費は「平成28年子供の学習費調査」(文部科学省 )より
※大学費用の教育費は「平成28年度学生納付金調査」(文部科学省)より
※大学受験費用、一人暮し準備費は、実際額を想定した仮定です
※大学の一人暮らし費用は「第52回学生生活実態調査の概要報告」(全国学生生活共同組合連合会)より
子供が18歳になる高校卒業までに541万円使用し、大学は受験費用、一人暮らしの準備費用、一人暮し生活費、大学入学金、授業料で4年で887万円を使いきってしまいます。ため息しかでません…
以上のように
大学卒業までの教育費は、1,428万円
住宅ローン3,000万円を借りたときの返済額
住宅ローンを3,000万円借りると、総返済額がいくらになるか検討します。
【住宅ローン借入条件】
借入時年齢:40歳
借入金 :3,000万円
ローン利率:1.12%固定金利(フラット35固定金利)
返済期間:35年
以上の借入条件で3,000万円借りると
月々のローン返済額は8万6,374円(年間103万6,488円)となり、
35年でローン総額3,628万円返済することになります。
628万円が利子分となり、低金利時代とは言われていますが、利子は高額になることが実感できます。
家を買うにはしょうがないと考えるのか、もったいないから家はやめておこうと考えるのは人それぞれですが、お金持ちで3,000万円キャッシュで払えれば、628万円安くなるとと考えると、ローン自体は本当に損ですね。
3,000万円借入時の10年間の住宅ローン減税額
住宅をローンで買うと、住宅ローン減税の恩寵を受けられます。
10年間の住宅ローン減税額を下記サイトで計算しました。
まずはデータの入力です。「年収800万円 配偶者あり 配偶者を除く扶養家族16歳以上は0人。借入金額3,000万円、金利1.12%を」を入力しました。
計算結果
簡単な入力で、
10年間の住宅ローン減税額は259.3万円であることが分かりました。
ただし、すまい給付金は年収800万円では受けられません。給付金を受けられる年収の目安は、消費税8%時で510万円以下、10%時で775万円以下となるようです。
月々の生活費
月々の生活費は、リアルな我が家の支出額も入れつつ以下のように設定しました。
月々の生活費支出は26万9,955円と仮定しました。
年間では、323万9,460円になります。
一時的な支出
毎月の生活費以外にも、臨時で支払う支出があります。普段はボーナスで賄うことにしているものです。
車購入費:
・諸費用込みで240万円程度のファミリーカーを10年ごとに買い換える。
家族旅行費:
・年間10万円
住宅維持費、住宅保険:
・修繕積立金年額12万円
・地震保険は年額2万200円
・家具、家電買い替え費用 年額8万円程度
自動車税・車検費:
・自動車税は年間3万4,500円
・車検は2年ごとに10万円
・エンジンオイル、タイヤなどの交換費用は年間3万円
一時的な支出は以上の4項目としました。 普段は年2回のボーナスから払う支出です。
一時的な支出の年平均額は、67万4,700円となります。
年金額
日本年金機構によると、モデル世帯(後述)の年金月額は約22万1,000円(平成29年4月現在)とのこと。
ちなみにモデル世帯とは、夫の平均的収入(賞与を含む月額換算)が42.8万円(年収513.6万円)で40年間厚生年金に加入し、妻が専業主婦、妻が第3号被保険者を含め、国民年金を40年納めた場合です。
40年の長期で、しかも生涯の平均年収が513.6万円で、やっともらえる年金月額が22万10,00円なのです。しかも将来は減額が濃厚です。「そもそも、厚労省のモデルケース自体に無理がある」との意見があるのも頷けます。
実際にもらっている年金額はモデル世帯より少ないというデータがあります。実際の年金額の平均は、日本年金機構の統計によると次の表のとおりです。
2015年の値を見ると
・厚生年金 月額14万5305円(20年以上加入の場合、基礎年金含む)
・国民年金 月額5万5157円
となります。
夫が会社員、妻が専業主婦というモデルに合わせた場合、平均の年金額は20万462円になり、モデル世帯の年金額より2万500円ほど少なくなります。
以上より、今回の検討では、
年金額は月額20万,462円と仮定します。
年収800万円の暮らしの検討
ここまで、長々と、検討に付き合って頂いて有難うございました。
以上の検討により得た情報を整理して年収800万円、40歳で住宅ローン3,000万円を借入、40歳の時に生まれた子供1人を国立大学で一人暮しさせ、65歳で退職して、100歳までどんな暮らしができるのかを検討していきます。
まずはこれまでの検討結果を整理します。
【収入】
・手取り年収:594.2万円/年(49.5万円/月)
・児童手当:198万円/総額
・住宅ローン減税:259.3万円/10年(25.93万円/月)
・60歳~65歳の収入:再雇用で4割の手取り594.2✕0.4=293万円(24.4万円/月)
・年金:240万5,544円/年(20万462円/月)
・退職金:1,941万円
【支出】
・生活費(住居費込み):323万9,460円(26万6,165円/月)
・一時的な支出:67万4,700円/年(5万6,225円/月)
・教育費:総額1,428万円(学年ごとの費用は前述のとおり)
【検討条件詳細説明】
1. 妻は専業主婦、子供1人の3人家族
2. 40歳で年収800万円になり、それが60歳まで続いたとする
3. 子供は幼稚園から高等学校まで公立学校、国立大学一人暮らしで進学
5. 40歳で3,000万円の住宅ローンを金利1.12%で35年ローンを組む
6. 住宅ローン完済時の年齢は75歳
7. 車は50歳、60歳、70歳の時に240万円のファミリーカーを買い替え
8.車は80歳で手放す。ここから車費用は無し
9. 60歳で定年その後再雇用で65歳まで働く。手取り給料は現役の4割と仮定
10.老後(65歳以降)の生活費は月々25万円(毎月生活費だけで約5万円の赤字)
11. 40歳時の貯金は0円と仮定
として40歳から100歳までの貯蓄残高の推移グラフを書くと下のようになります。
【グラフ解説】
グラフの横軸は40歳~100歳までの年齢、縦軸は貯蓄残高を示します。棒グラフは退職金1941万円を60歳の時貰った場合、折れ線グラフは退職金0円の場合の貯蓄残高推移を表します。
今回の検討では「生活費323万9,460円+一時的支出67万4,700円=391万4,160円」、「子供1人の年間の教育費は、各学年で21万~223万円」なので、
年間の手取り収入が、594.2万円、住宅ローン減税と児童手当を入れると、年収800万円のサラリーマン世帯は、現役時代、年間0~210万円程度貯蓄できます。
40歳の時に子供が生まれたとしているので、一番教育費がかかる大学時の親の年齢は58歳~62歳です。棒グラフを見ると大学後の教育費もこなして60歳まで、貯蓄が右肩上がりで上がっていきます。
60歳の時に1,941万円の退職金をもらい、60歳で人生最高の貯蓄額5,413万円になって、その後65歳まで再雇用で年収237.7万円(現役時代の手取りの4割)で働くと、65歳の時の貯蓄が4,389万円になります。
老後となる65歳からの月々の生活費は25万円(年間300万円)で生活していくと、年金は月額20万円なので、毎月5万円生活費が赤字になりますが、平均寿命付近の85歳で貯蓄は1,340万円、大台の100歳で328万円となります。
しかも、40歳の時の貯蓄は0円スータトとしてグラフを書いているので、例えば、40歳の時に貯金が1,000万円あればそれだけ貯蓄額はかさ上げされることになります。
黄色の折れ線グラフは、退職金0円の場合ですので、自分の会社の退職金が、だいたいいくらか分かっている方は、黄色の折れ線グラフの値に、実際の退職金を加えれば、自分に置き換えてグラフを見ることができるようにさせて頂いています。
以上の検討結果より、
年収800万円は、人生で一度も貯蓄がマイナスにならないことがわかりました。
ただし!以下のことは検討できていないので、長い人生で、支出が増えるときはあることは忘れずに慎重に支出かんりした方が安全です。
【この検討で考慮できていない事項】
・ 親の介護費用を考慮していません。自分の介護費用を考慮していません。
・ 自分が病気になったときの医療費を考慮していません。
・ 現役時代の年収の低下を考慮していません。
・住宅はリフォーム(120万円/10年)仮定しているが、60年間使用できるか不明。
・ 60歳で必ず再雇用され、現役時代の4割の年収をもらえるとしています。
・ こどもの就職後の金銭的支援を考慮していません。
・ その他、検討事項に記載されていないことは考慮されていません。
まとめ
例えば、今回の検討では、10年ごと(50歳、60歳、70歳の計3回)に、240万円の国産普通乗用車を買い替えていくことを前提としていますが、
「700万円の外車はこの年収で買ってもいいのか」、「子供の教育費をどこまでかけてもいいのか」、「老後海外旅行にいくら使ってもいいのか」を考え、見直しするときの参考にこの記事を使用していただけると幸いです。
長い人生で、自分の収入に対する貯金額推移をマクロ的に知っておくことは非常に重要です。大きなお金を使う際に、一度立ち止まって、長期的な視点で考えることができるようになるからです。
例えば、今この瞬間使おうとしている「500万円」がどのくらい老後、人生に影響を及ぼすのか?「500万円」の重みを感じられれば、慎重に行動するようになると思いませんか?
そして、未来がわかれば、節約をしたり、「もっともっと働いて稼いでやる!!」とエネルギーが注入され働く原動力になるかもしれません。
今回は、子供が1人の場合で検討しています。子供が2人になると、子供の大学までの教育費が1,428万円なので、教育費だけ考えても子供2人だと、85歳ごろに赤字になってしまいます(40歳時に貯蓄が1,428万円あれば問題ないですが…)。
こういった観点で見てみると、年収800万円は老後まで考えると油断はできないのではないでしょうか。
ですから、若いうちから、貯蓄や投資をして、お金の緊急事態に対応するための「貯蓄」をしていかなければならないのです。
ちなみに40歳から85歳まで540ヶ月あります。月額1万円節約できれば85歳の時は540万円の差になります。日々の節約の重要さに気が付けば年収800万円は幸せな人生がおくれるのではないでしょうか。
年収800万円のサラリーマンが40歳で住宅ローン3,000万円を借り、子供1人を国立大学一人暮しで卒業させ、65歳から月々25万円で生活したとすると、65歳の時の貯蓄残高は4,389万円、平均寿命付近の85歳の時の貯蓄残高は1,340万円、100歳の時の貯蓄残高は328万円になりました。安心して生きていけますが、40歳時の貯蓄額が少ないと、しっかりとした家計管理をする必要がありそうです。自分のやりたいことができる幸せな人生を歩めそうですが、油断はできない暮らしとなりそうです。
参考にした資料と補足説明
教育費については、幼稚園から高校までの教育費は、「平成28年子供の学習調査」(文部科学省)の資料を使用しました。
文部科学省が調査した各学年での教育費の額は下記のようになり、今回の検討では、この記載額を教育費として使用したとして検討しています。
一度、今回の検討の「教育費」の費目にはどんなものが含まれているのかを下表の左端の項目をみて確認しておくと、今回検討の教育費がどこまで網羅しているのかがわかります。
給食費やPTA会費、えんぴつ、ノート、消しゴム、ピアノなどの習い事費用、その他を含んだ統計データとなっているので、学校外の費用を含め、日本人が使用する教育費の平均と扱っても差し支えないデータです。
すべて公立学校に進学した場合の幼稚園から高校までの教育費
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm
大学費用の教育費は「平成28年度学生納付金調査」(文部科学省)のデータを使用しました。
大学の一人暮らし費用は「第52回学生生活実態調査の概要報告」(全国学生生活共同組合連合会)のデータを使用しました。
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
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